自死遺族支援のためのシンポジウム ―支援のための提言―

(前頁つづき E) 第1部■自死遺族に寄り添う“グリーフ&モーニング” 講師:東京福祉大学・大学院 教授 鈴木 康明

総括

最後、ここ見て下さい。今日お話ししてきたことの総括です。ぐるぐるっとまとめました。
先ず、何はさておいても安心感と安全感を提供していきましょうよ。難しく考える必要はないです。先ず、物理的な安心と安全です。

それは話している言葉はでないということですね。それから他から聞かれない。「ここで話 したことは絶対ここだけなのよ」っていう、ここ保証して下さい。それから具体的に関わって下さい。

やはりですね、発言の評価は人を傷つけますね。点数付けないで下さい。なので“×”付けました。ハイ、発言の評価はバツテンです。

それともうひとつあります。勝手な意味付けをしないで下さい。勝手な解釈をチョッと抑えましょう。これされてしまいますと怖くて言えなくなります。

次に行きます。何をさておいても、個人差の尊重です。なので比較することは厳禁です。
それではですね、ちょっと最近の傾向で、私、気になっていることがあるんですけれど、どうもグリーフカウンセラーさんと称する方達が出始めて来てるんですね。ひとつのアプローチとして認めてはいきますけれども、何か専門性に特化することが怖いなと思うんですね。

■かかわる際の留意点

@ 安全感と安心感
 傷つき動揺している遺族に、安らかで
 心落ち着く場所と時間を提供する
 ×発言を評価する
 ×発言に勝手な意味をつける

A個人差の尊重
 一人一人抱えている課題や歩みのペース
 は異なるのであり、まずその独自性を
 尊重し、寄り添う姿勢を大切にする
 ×他の人と比較する
 ×先行研究などを枠組みにする

B保護的
 ゆっくりその人のペースで気持ちを
 言葉にしてもらうなか、自責や罪悪感に
 着目し、むやみに自分を責めすぎない
 ように話す
 ×根掘り葉掘り聞き出す
 ×早く話して下さいと焦らせる
 ×先回りする

C 信頼感と連帯感
 同じ人としてかかわっていることを
 感じてもらう
 ×感情の表現を抑え込む

D 自己肯定力を信じる
 死別の悲しみの消滅を目指すのではなく
 必ず、 悲しみと上手に付き合える時が
 来ることを信じる
まとめにかえて
ーあたりまえのことをあたりまえにー

@ 相手の様子をよくみて下さい
 →いきなり話しかけない
 →無理やり話題をつくらない
 →「聴く」という態度を押し付けない

A 心して話してもらうためには?
 →責めない

 あなた自身が
 →落ち着いている
 →穏やかである
 →自然である
 →ゆっくりしっかり話す

B 聞かせていただけますか
 →お教え下さい
 →こちらのこだわりを抑える
 →忍耐強く
 →ふりはしない

○ありのままの自分が受け入れられて
 いると感じてもらえるように!

C 主体はだれ?
 →お話ししたいものだけをどうぞ
 →お説教は弱まっている力を奪う
 →自分の体験談は二の次

D 気をつけましょう!!
 →がんばろう
 →アドバイス
 →達観、俯瞰
 →気持はわかります
 →推測、憶測そして気休め、
  さらに思いこみ

 ―あたりまえのことをあたりまえに―

繰り返して申します。そういうアプローチもあってよろしいかと思いつつも、何か理論とか枠組みが先行してしまっていることは恐ろしいと私は思います。だから、きちんとですね、個人差の尊重って私申し上げていますのでね、先行研究は先行研究。
もっと大切なのは目の前のその人。
そしたら三つ目です。バツ付けました。根掘り、葉掘り聞き出さないで下さい。根掘り、葉掘り聞き出さないとやっていけないお仕事ありますが、少なくともこの領域ではないと思います。何故なら、根掘り葉掘り聞くということはその人ではないです。
聞いている私の興味本位ですね質問は大事なんですよ。今日はそこまで入り込みませんけれども、質問は大事です。
とくに開かれた質問は大事です。けれども訊問、詰問は必要ございません。
早く話して下さいと。焦らないで下さい。話している方のペースです合わせて下さい。具体的にどうぞ合わせて下さい。
先回りもしないで下さい。先程のチョッと解釈と関わりますが、「あなたの言いたいことはこういうことね」。先回りしないで下さい。待ってて下さい。バッテン、感情の表現を抑え込まないで下さい。例えそれがネガティブであればあ るほど受け止めていって下さい。
何故、これ、私こだわっているか。それはこういうことです。 人間には自己肯定力あります、ということです。
それとグリーフワークを一番知っている方はその本人ですから、その方にお任せなんです。 余計なことを言う、余計なことをする。それはその方の力を阻害すると思います。目的はですね。こういうことです。死別の悲しみの消滅を目指す、これは嘘だと思う。何故か。単純です。
無くならないからです。併せて、ご遺族の方も無くなることは望んでいない。何時までもずっと思っていきたい。だとすれば何ができるか。
そのこととのお付き合いの仕方を一緒に考えていく。無い知恵絞って、ああでもない、こうでもない、ず〜と考え続けていくことじゃないかな。いかがでしょうか。これが私の提案なんです。人間信じていきたいし、人間はそういう素晴らしい生きものだと思っております。ということかな。

どうぞ“当たり前のことを当たり前に”。これ以外にないと思います。本当に当たり前のことを当たり前にし、ひとつ付け加えるとすると、“丁寧に”っていうことかなと思います。

何が当たり前か。@ABCそしてDこれ全部当たり前だと思っています。どうぞ、丁寧にしていただけるとありがたいなと思っています。

ひとまず、用意したものはこういうことでございます。この後は南部さんのお話です。さらに皆さんとやり取りがあるということでございますので、そこでですね、ご質問、ご意見等頂けたら幸いでございます。ひとまずお礼申し上げます。
ありがとうございました。

第1部終了



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