自死遺族支援のためのシンポジウム ―支援のための提言―

(つづき C) 第2部■自死で家族を亡くした経験から伝えたいこと (NPO)全国自死遺族総合支援センター 事務局長 南部 節子

これはどうなんでしょう。分からないですけど、松澤大樹先生という方ご存知ですか。「心の病は脳の傷」という本を出されています。読みました。こういう特殊な機械“MRIやCT”脳の画像を見る機械を開発されて、正常者は何にもない。うつ病とアルツハイマーは少し傷があるというのを発見されたそうなんです。これをちゃんと証明できれば、自死 遺族の方も病気と一緒ということに理解できるんじゃないかと思っています。

先ず、自死、自殺はどうして起こるかというプロセスを皆さんに理解してもらって、皆に伝えてほしい。そして、自死遺族の方がちゃんと話せるようになってほしいと思っています。「どうして亡くなられたんですか」「え、自死で亡くしました」「病気で亡くしました」「癌で亡くしました」「交通事故で死んだ」「事件に巻き込まれて亡くなりました」。皆が言えるようになってほしいと思います。

私は電話して「調べてほしい」と言ったんです。そしたら、「先ず精神科に行って、うつ病か、統合失調症か、アルツハイマーかの診断書をもらってから来て下さい」と言われました。
そうじゃなくて、正常かどうか診てほしかっただけなのに。だからそういう人がいればいっぺん診てほしいと思うんです。お金もかかります。4万円と言われました。いっぺん行こうかと思ってます。

自死、自殺、この表現ですが、良く議論しないで、どっちかの言葉に決めるっていうのは私は危険なように思います。自死、自殺、自決、自認、自傷、皆“自”が付いているじゃないですか、自から。言葉を変えるなら私はコロリとこの“自から”外しちゃったらどうかなと思っているんですね。だけど今はまだ自殺、自死両方を使っていいんじゃないかなと私は思っています。


自死遺族ですね。只々皆さん心のケアとか言いますけれども、生活がちゃんとできないと生きていけないですよね。いろいろな問題があるんですよね。
「うちはJRから来ました」。知らなかったんです。でも、私はお蔭様でいろんな人に助けられました。亡くなった時に、あるお坊さんが「こんな時になんですが」と言って、葬儀後のアラカルトをいただいたんです。すごく助かりました。大黒柱を亡くしたら、手続きがいっぱいあって、何をしていいか分からない。それは一覧表になっていました。東京都 ではそれを参考に自殺、自死と書かないで“大切な人を亡くされたあなたに”というリーフレットを作って、これを死体検案の時に渡している。それと遺族の人がその時に行けなくても大事に持ってらっしゃって、「やっと来れました」という方結構いらっしゃいます。

身体が悩みですよね。私はもう死にたいと思わない。自分に腹が立ちました。夫はあんなに苦しんでいるのに、何で自分は死にたいと思わないんだろう。自分に腹が立ちました。

でも身体にきました。夫が足がしびれて歩きにくい、私もその通りになったんです。ある朝しびれて壁伝いでないと歩けなかった。目は真っ赤、頭が痛い、もう、子供が心配して連れて行ってくれたんで私は帰ることができました。家族の健康状態ですね。

それから、家庭内の後追い。私が後追いしないかと思って子供心配したんだけど、子供も、私は出かけて行って帰ってこないんじゃないかとすごい心配で、ひっきりなしに電話をかけまくり、怒られました。「お母さんは監視しているのかどうか」と言われ、でも心配で、心配で帰ってこないと今も心配ですので、遠慮して1週間に2回くらいしか電話しないようにしています。

私はお陰様で生命保険とか遺族年金とかあって生活はできますが、多重債務を抱えてらっしゃる方とかは債務の整理の方法を知らないんです。ご自身が朝昼晩働き、一生懸命返済して、やっとのことで電話をくれた人ありました。「何で、整理できるのに、放棄できるのに」と言って弁護士さんに繋いだら期限が明日までやったと言う人があったけど、何とか できて良かったです、本当に。そういうことがいっぱいありますね。

身内や親戚に私は責められることなかったですが、ご主人が亡くなられた方はほとんど舅さん、姑さんに「お前と結婚したから亡くなった」とか言われているんですよね。それは辛いですよね。うつになっちゃいますよ。ですから皆ひとりで何もできませんよね。ひとりではできないんで、皆が繋がり合って、生活し、そして寄り添う。寄り添うって簡単に言うことができますが、なかなか難しいと私は思っています。言葉って難しいですよね。

ある保健師さん、私等の仲間の保健師さんですが、どうしても保健師って指導しちゃうんですよ。指導ってビックリしました。何とかしてあげなくちゃて思ってしまった。「いや、そうじゃないんです。一緒に、一緒に考えていきましょう」という姿勢でお話を聞いているうちに、何が困っているかっていうことが出てきますよ。だから「あ〜こうしなくちゃ」 とか言っちゃうと、相手はは引いてしまう。私も嫌でした。「元気出して頑張って」て言われるの嫌でした。こんな時にどうして頑張れるのと思いました。でもある人は「頑張れ」って言われて、嬉しかったという人もあるんです。だからもう、人それぞれ。だからマニュアルありません。

ゲートキーパー研修で、言ってはいけない言葉、言っていい言葉、言わない言葉がありますけれど、それはないなと私は思っているんです。何この人、何を考えてくれているのかと思っちゃう。それよりも、誠意をこめて、自分自身が相手のことを考えて、出た言葉は通じると私は信じています。そしたら相手に通じますよ。先程鈴木先生からもありましたんで、“集い”が全てではないですけれど第一歩。やはり、亡くなった人との出会いがあるし、人生の再構築のきっかけ。そして先輩を見て、自分もああなれるかもしれないと思いますよね。

それから、「ポスト トゥラウマティック グロス(Post Traumatic Growth)」。“心的外傷後成長”って言うそうです。
何時かの新聞に、阪神大震災でご両親を亡くされて、助かった方がいましたが、当時何歳だったのかな。今何年経っていますか、震災から・・・。
もう20歳かなんかなっていらっしゃる娘さんが、「医者になりたい」と言って、なったという話が載っていました。そういうのをPTGと言うらしくて、私もそう考えています。

何かして辛い思いをしたけれども、ひとりでもこんな思いをした人を無くしたいと思ってやっている。分かち合いでもいろいろ考えたら、遺族の方がやっぱり何年か、何回か、3回かやっているうちに、この経験を生かして、何とか手伝いたいという言葉が出てくるんです。そして、亡くなった人の証を見せたい、亡くなった人の人生を消したくないと仰る んです。やっぱり、死を無駄にしたくないと仰る。だからそれがやはりPTGになるんかなと思っています。

黙することは、
    たんなる沈黙ではない。
秘密の哀しみなど存在しない。
語られることのない哀しみは、
もっと耐えがたい重荷となる


                       (フランシス・リドレイ・ハヴアガル)


このことが、これが自死遺族の方ほとんどそうなんです。耐えがたい重荷を抱えているということです。
悲しみに変わるもの、変わらぬものがありましす。“もうあえて変えようなんてと思っても変えられない。過去は変えられない。だから未来のため。自分なら変えられるかもしれない、少し。”と言う話をしていました。
そういうことで、終わりにします。ありがとうございました。

第2部終了



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